やすばすく

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俺節 あらすじ

俺節の素晴らしい台詞たち、素晴らしいシーンたちを記憶に残したい、と思って個人的記録として書き始めたんですけど、東京楽が終わったのでちょっとずつアップしてみようかと思います。間違ってる部分もあるかと思いますが、雰囲気で読んでいただければ…。個人的に好きな台詞、熱かった台詞は何度か確かめたので合ってるかなあと思います…(どの台詞だよ問題)

 

 


一幕

 

【駅】

 幕に映る吹雪。その前をゆっくりと歩いてくる腰の曲がった老婆、後ろから借金の取り立て屋が二人。孫一人育ててる婆さんのところへ取り立てに来るのも気分悪いんだわ、と嫌味を言われてもとぼけたように受け流す。あの孫、ろくに人の目も見てしゃべれねえやつだったじゃねえか。せいぜい孝行してもらうんだな。そんな取り立て屋の言葉も聞かず歩き出す老婆、悪態をついて去っていく取り立て屋たち。

 吹雪の向こう、駅のベンチに俯き腰掛けるコージ。寒さに肩をビクン、と震わせたり、腕をさすったりしている。老婆はコージの元へ。「ばっちゃん!」立ち上がり駆け寄るコージ。「ばっちゃん、堪忍な…。」「東京は謝りながら行くとこじゃね。」背負っていた包みをコージに手渡す祖母。「これ…せびろ?…ぜんこどした?ばっちゃん!」「それさえ着てれば、おめも、一丁前の都会の人間だ。なんも恥ずかしいことはね。恥ずかしいことはねんだ…」
 「…おめ、一人か。おめに友達も作ってやれなかったな。」「そんなもん、ばっちゃんが気にすることでね。」「おめ、東京に何しにいくんだ」「…オラ、もう負けたくね。笑われんのもこりごりだ。でも、オラんだって武器あるって気付いたべ。世の中、とっくりかえしてやれるもの!」力強い表情に決意が滲む。

 

【東京・北野プロダクション前】
 行き交う人々をキョロキョロと眺めながら、カバンひとつを胸に抱いて歩くコージ。不安、喜び、好奇心が入り混じったような表情。舞台の中央に辿りつき、「海鹿耕治ともうします。なにとぞ、よろしくおねがいします!」と叫び、額を地につけて土下座をする。すぐ傍で談笑する男たち。しばらくしてその中の一人が土下座しているコージに気付く。「君、何してんの!?」弟子入り志望の人?邪魔だからもっとあっちでやって。そんな冷たいあしらいにも「はい!」と返事をして、下手へ移動して再び土下座するコージ。
 しばらくすると北野が登場。付き人の女性に手を引かれながら『真夏の果実』を歌い、スキップで通り過ぎる北野に、目を丸くしながら抱きしめていたカバンをぽろっと落とすコージ。「北野波平先生でいらっしゃいますか!?」「おお、そうだよ~」「オラ、先生の大ファンで!」「そうか、それはありがとう!」そう言うと再びスキップで建物に入って行ってしまう北野。「弟子にしてけろ!!」叫んで後を追おうとするコージだが、取り巻きに止められる。「今どき演歌やりてえなんて変人、誰も弟子にしたくねえよ!」と笑われ、追い払われそうになるコージ。
 そこへ、「まあまあそうつれないこと言いなさんな!」ギターをかき鳴らしながら現れた男。「そいつ、かれこれ四時間はそこで土下座してたぜ。たいした根性じゃねえか!…ま、それを四時間見守ってた俺もたいした根性だが。」「優しい人だな…」「よく言われる。」戸惑いながらも、ぽうっとした表情でオキナワを見つめるコージ。「オキナワ!お前よくまた顔を出せたな!」
 オキナワと取り巻き(大橋)が揉める中、建物から出てくる北野。女性誌の取材なのに男ばっかりじゃないか!と怒っている。「おおオキナワじゃねえか!」と気さくに声を掛ける北野。財布泥棒なんかの相手する必要ないですよ、と止める大橋。「泥棒じゃねえよ!財布の中身をちょっと拝借しただけで…」「それを財布泥棒って言うんだよ!」そんな中で再び、「弟子にしてけろ!」と土下座するコージ。「後生です、人殺し以外なんでもします!」「北津軽郡から出てきました、ばっちゃん置いて、俺には歌しかねって出てきたんす。」ここにいる人間、全員歌しかないんだよ。と断る北野。「北野先生以外に本気の人いるように見えねえですけど。」怒る取り巻きたち。「喧嘩売るつもりはねえんです!けんど、こん中で一人でも、本当に歌しかねえって人がいるなら…会ってみてえから、一歩前へ出てくんねえか!?」立ち上がり、勢いよく取り巻きたちの方へ踏み出すコージ。どよめき、後ずさる取り巻きたち。「お前面白えな!面白えよ!おい、北野のオッサン!一曲聞いてみて、それから決めたらどうだ。」「彼を弟子に!そして俺のこともそろそろ許してください。」ちゃっかり頭を下げるオキナワ。大橋が止めようとするも、「もうお前も、こいつの歌が聞いてみたくなっちゃってんだろ?」と説得して、コージに歌うチャンスを与える。
 「『なみだ船』でいいか。歌えんだろ?」「はい!」力強く答えるコージ。意を決して、オキナワのギターに乗せて歌い出す。「涙のォォォォォ…」力を込めた歌声で歌い出すが、北野たちの方を振り向くと、声が出なくなる。喉のあたりを押さえて挙動不審になるコージ。「…もう一回だな?」仕切り直そうとギターを弾きだすオキナワだったが、コージが慌ててギターのネックを掴んで演奏を止める。「なんだよ!!」「みんな、見てるからちょっと…。人前で歌うの、めぐせくて…」モジモジとはにかむ。「めぐせえってなんだよ?」そんな間に北野は立ち去り、大橋からはもう来んなよ!と吐き捨てられ、取り残されるコージとオキナワ。
 「なんなんだよお前!」「…いっつもだ…!いっつも同じこと繰り返してきた…」頭を抱え、地面に崩れ落ちるコージ。「まあ…そんなに落ち込むなよ。」励ますオキナワに、「オラじゃなくてアンタが歌えばよかったんだ!」と逆上するコージ。「俺はこっち専門だからよ!」(ギターを掲げる。)「北野は自前の作曲家集団抱えてるからよ、俺も入り込んでやろうと思って弟子入りしたんだけど、まあいろいろあって…クビだ。」「いろいろって…?」コージの疑問をさりげなく流し、「よし、飲みにいくぞ!」とオキナワが誘うも、土下座をしたまま、「ぜんこがねえす…。」「なんだよ!」オキナワの大声にビクッとするコージ。続けて「ついでに宿も…」と言い、恥ずかしそうに笑う。「ようし!俺の城に連れてってやるよ、東京で一番の場所だぜぇ。」カバンを投げられ、慌てて胸に抱くコージ。「迷子になんなよ!」とオキナワに先導され、戸惑いながら後についていく。

 

【みれん横丁】
 ボロボロの建物が寄せ集まった通りに、ボロボロのなりをした住人たちが姿を現し、『みれん横丁のテーマ』を歌い出す。「良いも悪いもあきらめて苦笑いで飲もう…」諦めとやりきれなさが漂う。オキナワが現れ、俄かに活気づく住人たち。「北野波平に許してもらえたのか!?」「俺の伝授した土下座はしたのか?」口々にオキナワに声を掛ける。オキナワは「懐のちっちぇー野郎ばっかだぜ。」と不満げかつどこか自慢げ。その後ろ、ついてきたコージは、白い粉を売りつけられそうになったり、足を踏んだと因縁を付けられたりと散々に絡まれ困っている。「見ねえ顔だな。」「身ぐるみはがせ!」もみくちゃにされて、オキナワが止める。「そいつは俺の友達だ!」「オキナワの友達でも、俺らの友達じゃねえからな」
 再びもみくちゃにされそうになったところで、「落ち着きたまえ諸君!」登場したのは軍服を着た小太りの男。「陛下!」(実のところは結婚詐欺師。)お前たちも行く場所がなくて初めてここに来た時、仲間として受け入れてもらったから今があるんだろう?と住人たちを諭す。住人たちが落ち着くと、酒箱の上に乗り、親愛のしるしに、と、手に持っていた肉の串を渡す。「…ばんべきゅ?」集まってきた住人たちに囲まれ見守られながら、オキナワに促され、肉を口にするコージ。「…おいしいです!」一気に場の空気が和む。「それで、これは何の肉なんです?」車のブレーキ音。何かにぶつかる音。住人たちが一気に振り向く。「あっちで犬が轢かれたぞ!」「何犬だ?」「秋田犬だ!」「よーし、とってこい!バーベキューだ!」目を丸くして、みるみる青ざめるコージ。走り出した住人たちにぶつかりフラフラとよろける。これでコージも仲間だな!と喜ぶ住人たちを横目に、ゴミ箱の蓋を取り、勢いよく嘔吐する。ショックを受け、ぐったりとその場にへたり込むコージ。
 そこへ「おい!すっげえもん拾ってきたぞ!外人の女だ~!!」両手両足を掴まれ、運ばれてくるテレサ。俄かに沸き立つ男たち。「順番を決めよう!」陛下の一声でテレサの前に一列に並び、最前列の男がズボンを下ろす。「ちょ、ちょっと待ってクダサイ!」慌てるテレサ。「ちょっと待って!…病気持ちかもしれない!」と騒ぎ出す最前列の男。「よし、コージに味見させよう!お前、ズボン脱げ!」と明るく提案するオキナワ。えぇっ!?と戸惑って後ずさりするコージをまたもやもみくちゃにしてズボンを脱がせようとする住人たち。
 大騒ぎになっているところへ三人組のヤクザが登場する。「おーいたいた!悪いな、こいつはうちの商品なんだ!」下っ端がテレサを掴まえる。「お前ら、まさか一緒になってこいつを逃がそうとしてんじゃねえだろうな?」否定する住人を、コージの目の前すれすれで殴り飛ばす下っ端。驚き怯え、倒れ込んだまま動けないコージ。引き摺られ、連れていかれるテレサ。「助ケテ…誰か助けてクダサイ…」泣き声のように救いを求めるが、誰も動こうとしない。ひとり、コージだけが、うずくまり呻き声を出して葛藤した末、「ちょ、ちょっと待ってください!」と声を上げる。「あは、なんだかうまく言えないけど…このままその人連れていかれるの、オラなんか嫌だなぁ。」へら、と笑いまじりに立ち上がるコージ。慌ててコージを諭すオキナワ。「東京じゃああいう方たちに逆らわない方がいいんだよ。お前の田舎でもそれは同じだろ?」「んだな。どこでも一緒だな!」途端に牙をむいて殴りかかろうとするコージ。オキナワが止めるも、「なんかムカつくなぁ!」と、腹を立てた下っ端に殴られる。「おい、もっとやってやれ」という親玉の一声で、殴り飛ばされ、蹴りを入れられるコージ。止めようとしたオキナワも殴られる。「テレサ!勝手なことをすると、見ず知らずの方々にも迷惑がかかるんだぞ!」「はい、すいません、すいません、帰ります、帰りますカラ…」目の前で痛めつけられるコージたちの姿にショックを受けるテレサ
 フラフラのまま、オキナワに首根っこを掴まれ、一緒に土下座をして謝るコージ。「すいませんでしたぁ!」「すいませんでしたぁ…」立ち去り際、オキナワに蹴りをまた一つ、コージには唾を吐きかける下っ端。コージの体に力がこもる。「まてぇ…」「…あン?今俺に言ったか?」「謝れぇ…」「なんでお前に謝らなきゃなんねえんだよ!」再び殴られるが、ゆらゆらと気迫がのぼるように立ち上がるコージ。「オラにでね。せびろに謝れ。ばっちゃんのせびろに謝れ!」「…殴りすぎて頭おかしくなったんじゃねえの?」「オラこの背広にくにしょってんだぁ。これだば二度とばっちゃんに顔合わせられねえべさ!」殴られても殴られても立ち上がるコージ。「謝れ!やんだば、殺せぇ!」背後から頭を激しく殴られ、白目を剥きながらもなんとか耐えて、ふらふらと鉄柱に身を預ける。
 「今度はオラの番だ。今度はオラが、オラの武器で、おめぇらを殴るべ。」目を閉じ、天を仰ぐコージ。「……凍てつくようなァァ…港でェひとォりィィ…」気迫のこもった声で、『港』を歌い出す。思わず動けなくなるヤクザたち。息をのんで見守る住人たち。「あんたのォォォ…帰ェりィをォォ…待ァァァってェ…おりますゥゥ…」オキナワの方へ手を伸ばすコージ。ハッとしてギターをたぐりよせ、コージの歌に合わせてかき鳴らすオキナワ。「あァ~ァァ、北の港町」住人たちもコージの思いに引っ張られるように共に歌う。「冬待つゥ…おォォ、んンゥ、なァァァァァ!!」絶叫のように歌い終え、目を回して体を投げ出し、倒れ込むコージ。我に返ったように再びコージに殴りかかる下っ端たちを止める親玉。「…二番まで聞いたら、謝っちまうとこだったぜ。」助けなきゃ、と言うテレサを引き摺り、連れて行くヤクザたち。それと同時に、コージ!と駆け寄る住人たち。「死んだかぁ…?」「よし、身ぐるみはがせ~!」飛び掛かるのをオキナワが止め、「治療だ!」とコージを担ぎ上げ、横丁の奥へ運んでゆく。(5/30「しょんべんかけとけ!」6/1「酒かけとけ!」)一人残ったオキナワ、興奮した顔を浮かべ、みんなの後を追いかける。

 

【ストリップ小屋】
 『カスバの女』を歌うマリアンと、周りで踊る踊り子たち。テレサが慌てて裾から現れ合流する。おかしなビブラートをかけ歌い上げるマリアン(踊り子たちもすごい揺れてる)だったが、ショーが終わると「誰も聞いてないよ!」と怒りながら楽屋へ引き上げる。一方こちらも怒っているエドゥアルダ。「見タ!?見タヨネ!?あれ絶対そうダヨネ!?正面のオッサン、盗撮してたヨネ!?」「エドゥアルダちゃん?ここのお客さんほとんどオッサンだから~」とアイリーンが嗜めようとするも怒りが収まらない。「ワタシが股をパカーッ!と開いたら、カバンをグググーッ!と近ヅケルノ。あれ絶対カメラ入ってタヨ!」「そういう時はサ、あえて、こっちから近づいていくンダヨ!」マリアンの言葉に皆が集まり注目する。「そしたら相手もアタシのアタシを覗き込んでくるから、しょんべんひっかけてやればいいノサ~!!」「そんなに都合よく出まセンヨ~!」とアイリーン。「三十年も踊ってたら、舞台の上でできないことなんてナイネ~!」張り切って踊り出すマリアン。踊り子たちに向けてM字開脚、から腰を振りあげる。明るい雰囲気の中、「あれェ?マリアン姐さんってなんしゃいでしたっけェ?」「シャシャシャシャオ!!」シャオの爛漫な疑問にその場が凍り付く。恐る恐るマリアン(M字開脚したまま)を見る面々。「…その質問に答えたら、世界から戦争が無くなるっていうんなら、教えてあげてもいいけど。いいけど~!」腰を振りあげながら答えるマリアン。
 「だ、大丈夫デスッ!わ、私トイレ…!」シャオが慌てて扉を開けると、小屋主が立っている。「ま、マネジャ…」「お前も無断外出かぁ?」「違いますトイレデス!」弁明するも、手持ちのティッシュ箱で頭を叩かれるシャオ。「ダメだ!ウクライナみたいなことになりかねないからなぁ!エビバディ!わかってますか!?そこのブラジルコンビ!」突っかかろうと近づくマリアン、止めようとするエドゥアルダ。マリアンも思い切り叩かれる。「フィリピン、アンダスタン!?」「ファイ!!」全力で返事をするも叩かれるアイリーン。「福建省!」「ハイ!」やっぱり叩かれるシャオ。小屋主はテレサにも詰め寄ろうとするが、橋本が立ちふさがり宥める。「橋本さん…君は僕の味方だよねぇ?」「い、いえいえいえいえ!」橋本の胸倉をつかむと乱暴に口づけ、挙句グーで殴って卒倒させる。どでーんと仰向けに倒れる橋本さん。「エビバディ、アンダスタン!?」「…ハイ」「ハイッ」「ファイ!!」「…グッ!」満足げに楽屋を去る小屋主。
 「橋本さん!!」駆け寄る踊り子たち。「バカなことするからこれダ!」テレサを責めるエドゥアルダ。「ハイ。」「まだまだお金稼ぐんデショ!?」「ハイ…」「そのために仕事頑張るんデショ!?」「ハイッ…!」マリアンの叱責のたびに様々な「はい」で返事をするテレサを、「はい、はい、はーい!って!」「日本人みたーい」と揶揄するアイリーンとシャオ。「…ワタシはお金を稼ぐヒト。家族はお金を使うヒト…」堪えきれずつぶやきを漏らすテレサ。「そんな言い方!」咎めるようなマリアンの視線にハッとする。「スイマセン…」「別に私に謝らなくてもいいけど…」「いえ!皆さんにも、一度、ちゃんと謝りたいと思ッテ…」床に平伏すテレサ。「このたびの件につきましては、すべてワタクシの不徳の致すところでゴザイマス!」土下座で謝罪する。踊り子たち、しばし呆気にとられた後、「…テレサ堅いヨー!」「どっかのシャチョさんに冗談で教えられたんじゃナイノ~」と笑い出す。「もういいんだよ。お腹空いた!出前頼ム人!」エドゥアルダの提案に、皆ドヤドヤと畳の上に集まる。テレサを励ますように注文を聞くエドゥアルダ。(5/30「おまかせ」6/1「辛いの」→エドゥ「辛イノッテ!!」6/8「麻婆豆腐」→エドゥ「蕎麦屋に麻婆豆腐アッタッケ…?」6/10「コンニャク」→「コンニャクコンニャク!?コンニャクなんかナイヨ!!」6/18「もんじゃ焼き」→「もんじゃ焼き。ねえよそんなもん蕎麦屋にバカ!!」(エドゥさんノリつっこみ))
 ワイワイと話す踊り子たちに背を向け、座り込んだまま小さく鼻歌を歌うテレサ。それは『港』のメロディー。気が付いて、ニヤニヤと近づいてテレサを囲む踊り子たち。「…いいメロディーダネ!」とマリアン。パアッと明るい顔になるテレサ。「この曲、知ってマスカ!?」「名前は知らないけど…演歌、ってやつダネ。」「エンカ……」うっとりとその言葉を口にする。「…エエンカ?」「エエノンカ?」自らの胸をわさわさと触りながらふざける踊り子たち。大声で笑いながら暗転。

 

【みれん横丁】
「I love you~♪OK~…暇、すぎるぜェ~~~♪」横丁の階段に腰掛け、ひとり弾き語るオキナワ。階段の上から住人(人殺し)が現れる。「オキナワかぁ。コージどした」「放火魔に紹介してもらって働きにいったよ!」どこかふてくされている様子のオキナワ。「お前も働け~!」「俺はまだ250円も持ってんだよ。」「どうしたそんな大金!?」「俺とコージがデビューすりゃ、この何百倍も稼げるんだぜ!」話ながら表情が明るくなるオキナワ。「だけどコージはあれから一度も歌えてねえじゃねえか。」人殺しの言葉で再び面白くなさそうな表情に。「…めぐせえんだとよ。」「めぐせえ?」「恥ずかしいんだってよ!呆れるわ。」言い捨てるオキナワに、諭すように語り掛ける人殺し。「…オキナワ。俺この横丁でそんなやついっぱい見てきたぜ。自分に自信がなくて、なんか生きてるだけで恥ずかしいんだよな。お前が一人前にしてやれよ。」
 階段上、二人が話している反対側から、工事現場用の上着を羽織ったコージと住人たちがガヤガヤと帰ってくる。「くせぇか!」と嬉しそうにニオイを嗅がせているコージ。住人たちともすっかりと馴染んでいる。「オキナワ~!こっちさ来て、労働者のかぐわしきにおいを堪能しろよぉ~。」上着の前をがばっと広げ、体を揺らしてニオイをアピールするコージ。「やだよ」「なしてさぁ~!この、汗と泥とこのホコリのにおいこそ、この横丁のにおいだべな!」(両腕でガッツポーズをするように天を仰ぐ。)コージもすっかりこの横丁の仲間だ!あの歌歌おうぜ!と住人たちから声があがり、『みれん横丁のテーマ』を歌い出す。が、歌が始まった途端、はにかんで所在なげにするコージ。おいどうした、お前も歌え!と再び歌い出す住人達だったが、コージは困り笑いで逃げ出し、店の壁に身を寄せる。「プロ目指してるやつはこんなとこで歌わねえかぁ!」「いや、オラは…」「こいつめぐせえんだとよ。」と呆れ半分で助け舟を出すオキナワ。
 そこへフラッとギターを背負った一人の男が現れる。「あれ…大野のダンナじゃねえか!?」歓声を上げ、我先にと階段を降りて男に駆け寄る住人たち。ぽかん、とその様子を見つめるコージと、面白くなさそうに階段を上りコージの傍で胡坐をかくオキナワ。人殺しも階上から住人たちを見ている。大野に歌を請う住人たち。陛下が歩み出、鎮めようとする。「お前たち!ダンナはプロとして歌ってらっしゃるんだ!タダで歌ってもらおうとするなんて失礼だろう!ダンナはいくらでやってるんでしたっけ?」「三曲千円」「よし、金を集めよう!私が300円カンパする!」おお、というどよめき、そして各々取り出したお金を陛下に預ける。「集まりました、326円!」(金額が違う日あり)「足りねえじゃねえか!お前ら日銭稼いできたんだろう?」「いや、飯代は残しとかねえと…」へへへ、と笑う住人たちに、「じゃあ歌なんか聞いてる場合じゃねえな。」と呆れて立ち去ろうとする大野、しかし住人たちが縋りつく。「ただ飯食って荷をひくだけなら馬や牛と一緒だ!昼間の俺たちは動物だよ、畜生だよ!でも日が暮れて、一杯やりながら歌を聞く…その時ようやく人になれるんだ。牛や馬は歌聞かねえからな!」「ダンナ、俺たちを人間にしてくれ!」
 住人たちの悲痛な叫びに、しばしの沈黙の後、「…五木ひろしでいいか?」とギターを構える大野。わあっと喜ぶ住人たち。五木ひろしの『暖簾』を歌う。皆じっくりと聞き入っている。階上で訝し気な顔をしていたコージもまた、歌が始まると表情が変わる。大野の歌に聞き入り、くしゃくしゃの泣き顔になっていく。歌が終わり、住人たちが熱い拍手を送る中、コージが呟く。「オキナワ…あの人、変わった人だな…」「確かに、髪型と眼鏡と顔のバランスが絶妙だな。」淡々と返すオキナワに、「そうでなくて!まだ挨拶もしてねえのに、オラのために歌ってくれた…」感無量の様子で話す。だが住人の一人が「ダンナ!俺嬉しいよぉ…俺のために歌ってくれて…」と声を上げると、驚き、納得のいかない顔をするコージ。他の住人たちも次々と「バカいえ!ダンナは俺のためだけに歌ってくれたんだよ!」「いや、俺のためだ!」「俺だけのために歌ってくれたんだよ!」と主張し争い始める。コージも手を上げて入っていこうとするが入れず。(片手を振ってみたり、両手を振りながらぴょこぴょこと跳び上がってみたり。)そのうちにもみくちゃにされる大野。オキナワも階下に降りてさりげなくその混乱に混ざりこむ。
 大野が住人たちを振り払って立ち去ると、「なんだよ、みんなしがねえ流しの歌ありがたがっちゃってよぉ。」と悪態をつくオキナワ。「いい歌だったけどなぁ…」ほわん、としゃべるコージに、「コージ!飲みに行こうぜ!」と声を掛ける。「でも、ぜんこがねぇ。」自慢げに財布を掲げるオキナワ。「それ…!」「おい、お前!財布盗んだだろ!」どかどかと怒りながら戻ってくる大野、サッと財布を隠し体を硬直させるオキナワ。大野は別の住人をスリだと勘違いして追いかけていく。軽やかに階段を上るオキナワ。「たまにはぱーっとよぉ!景気のいい店行こうぜ!」「へぇ?」戸惑うコージ。人殺しが「じゃあ、お言葉に甘えて…」とついてこようとすると、二人でそちらを振り返り、手を振ったり苦笑いをしたりしてやんわりと断る。

 

【ストリップ小屋・舞台】
 すでに照明を薄暗く落とした店内。営業終了のアナウンスにも構わず、中央に張り出すステージ脇に丸椅子を並べ、何かを待つ客の男たち。その声に応えステージへひらりと上がる小屋主。「お待たせいたしました!当店自慢の踊り子ちゃんたちと夢の60分!トゥナイトがっちりはめまショー!」盛り上がる客たち。そこへオキナワとコージがやってくる。「オキナワ、この店…?」不審げにするコージを、強引に丸椅子に座らせるオキナワ。小屋主の卑猥な紹介と共に幕が上がり、ステージにエドゥアルダが登場する。凄みのある形相で客を睨みつけて回るエドゥアルダ。「エドゥアルダちゃん、笑顔っ!」小屋主に小突かれ、自己紹介と共に無理やりな笑顔でポーズを決めるエドゥアルダ。だんだんと険しくなるコージの顔。舞台上のエドゥアルダを見ないようにしながらも、興奮して手を伸ばす隣の男の腕をはたいて止める。(オキナワ、代わりに手を合わせて謝る。)コージだけが嫌悪と憤りを滲ませる中、「まずは五千円から!」エドゥアルダの競りが始まる。金額が徐々に上がっていくと、立ち上がって帰ろうとするコージ。「オキナワ…見損なったど。」「まあまあ、職業に貴賤なしって言うだろ?」「でもこんなのおかしいべ!」怒りをあらわにするコージを宥め、肩を掴んで再び着席させるオキナワ。そうこうしているうちに競りは進み、「八千円!」「他にありませんか?ありませんか?それでは、そちらの野球帽のお客様、エドゥアルダちゃん、お買い上げ~!!」野球帽の男に、蹴とばされながら共に舞台の裏へ消えていくエドゥアルダ。
 次に呼び込まれたのはテレサ。「…けえる。」舞台上のテレサを見ることもなく、再度立ち上がり、ずんずんと出口へ向かうコージ。競りが始まる。小屋主が最低額を言う前に「一万円!」と声が上がり、盛り上がる客席。オキナワに呼び止められ、憤怒の形相で振り返るコージ。舞台上に不安げに立つテレサの姿を見て表情が一変、目を丸くして驚愕し、食い入るようにテレサを見つめながら、一段ずつ階段を降りて舞台に近づく。競りは過熱して行き、タンバリンを首にかけた男が一万五千八百円をコール、他の客は悔しそうに財布を覗きながらも、それ以上の額を付けることができない。コージも頭を掻きむしり焦りの表情を浮かべるが声が出ない。「では、一万五千八百円で、こちらのお客様に決定です!」小屋主がそう告げた直後、「…一万六千!!!」一瞬静まり返る店内。みんなが、叫んだコージを振り返る。「オラが、一万六千円払うべ、だから…」顔を見て、それが横丁で自分を助けようとした男だと気づくテレサ。「ではこちらのお客様に決定ということで…」小屋主が言うと、タンバリンの男は猛然と怒り出し、さらなる高値をつける。コージも負けずに「二万!!!」噛みつくように値を上げていく。(細かく額を刻もうとする男に対し、一度に数千円単位で値段を上げていくコージ。)両者睨み合い、周りの客も盛り上がり、一気に白熱する店内。客の一人がタンバリン男に「兄ちゃん、五千円くらいだったら貸すぜ!」と助け船を出すも、「三万!!!」コージの勢いは止まらない。慌てて止めに入るオキナワ。「おいコージ無理すんなって!お前そんなもってねえだろ?」それでも興奮し舞台に向かおうとするコージ。小屋主に本当に金を持っているのか疑われ、言葉に詰まるコージ。代わりに、そんな金は持っていない、と謝るオキナワ。「…ではこちらのお客様、一万五千八百円で落札でございます!」小屋主がタンバリン男の方に身を翻し、競りが決着を迎えようとしたその時。
 「貸シマス!!!」…静寂。手を上げて勢いよく叫んだ、舞台上のテレサに、ソロソロと皆の視線が向く。「…ワタシ、貸シマス、お金。」再びそう告げ、コージを見、手のひらを向けて、あなたに、と示す。テレサの不安でいっぱいだった表情が、強張った笑顔に変わる。見つめ合い、頷くコージ。舞台に片足をドン!と乗せ、手の平をめいっぱい広げて威勢よく叫ぶ。「五万!!!!!」再び静寂。客も小屋主も展開を見守る中、タンバリン男が口を開く。「…それは無理だよ~~~!そこで俺が『六万!!!』って言ってもさぁ~~、なんか違うじゃん!気持ちがそっち向いちゃってるじゃん!!」情けない声で抗議する男。テレサとコージは見つめ合い、束の間喜びの表情を浮かべる。「テレサ、それはねえよ…」と小屋主がテレサを咎め、腹を立てたタンバリン男は「いいよいいよ!その子、金持ってないんでしょ?こうなったら嫌がらせで抱いてやるよ!」ステージ上に一万五千八百円を叩き付ける。改めてタンバリン男の落札を告げる小屋主。テレサの肩を抱き、舞台裏に連れて行くタンバリン男。コージを振り返り、後ろ髪引かれながら暗闇に姿を消すテレサ
 諦めきれない様子のコージ。金を拾うため小屋主が屈んだ隙をついて、幕の裏に駆け込んでゆく。すぐに、タンバリン男と腕を掴み合い再び舞台上に出てくる。「なんなの君は!」「堪忍してけろ!」「怒ってないから、ついてこないでよ!」「歌で、堪忍してけろ!」「歌ぁ?」「五万円ぶん歌うから、それで堪忍してけろ!」縋るように男の胸倉を掴んで嘆願するコージを、店員が二人がかりで引き摺り出そうとするが、タンバリン男がそれを止める。「いいよいいよ~!俺、聞いてみたいもん。五万円分の、う・た!」明らかに馬鹿にしている男。「歌ってみろよ、青年!!!」店員を振り切り、力のこもった形相でオキナワのもとに歩み寄るコージ。「オキナワ!…北国の春。」「…ああもう、どうなっても知らねえぞ!」
 ギターが鳴り響く。瞼を閉じ、意識を集中させるコージ。目を開き、「しらかばァ~、あおぞォらァァ、みィな~あみかァぜェ~」グッと力を込めて歌い出す。周囲の人々も息をのんで聞き入る。…が、客たちの方を振り返った瞬間、喉が詰まったように声が出せなくなるコージ。「……っ!」コージが歌えないと見るやいなや、店内の緊張が解け、「おい、連れてけ!」再びつまみ出されそうになる。コージは暴れ出し、他の客や小屋主を巻き込んでの掴み合い、殴り合いが始まる。殴られ倒れては立ち上がるコージ(相手の股間を掴んだり、腕に噛みついたりと泥くさく戦う)、援護しようとするオキナワ、その隙にタンバリン男に連れて行かれそうになるテレサ。小屋主までもが手にしているマラカスで客を蹴る殴るの大騒ぎ。舞台袖からその様子を覗いていたアイリーンが姿を現し、倒れたコージをさらに殴ろうとする男の後頭部をカバンで思い切り殴って助ける。橋本はテレサに駆け寄り、アイリーンと二人で男から奪い返し、コージとオキナワも誘導して裏へ逃げようとする。その寸前、コージは倒れていたタンバリン男の胸倉を掴み、その耳に向かって「あのふゥゥるさとへ、かえろかなァァ~!かァァァえろォかァなァァァ!!」叫ぶように歌う。なんなの!うるさいよ!と苦悶する男を床に打ち棄てて、踊り子たちとオキナワと共に裏へと姿を消すコージ。

 

【ストリップ小屋・楽屋】
 壁に耳を付け、外の騒ぎを聞いているシャオとマリアン。シャオが様子を見に行こうとドアを開けるとアイリーンが顔を覗かせ、意味ありげな笑顔を浮かべる。直後コージ、オキナワ、テレサ、橋本が部屋に雪崩れ込んでくる。アイリーン、橋本、シャオはすぐまた外の様子を見に出ていく。「ここにいれば、外よりは安全ダカラ…」テレサに言われ頷くコージ。露出の多い衣装姿のマリアンを見て、慌てて目を逸らす。「どうぞ、座ってクダサイ。」振り向いて、じっと見ていたマリアンと目が合うテレサ。「はッ!」と鼻で笑うマリアン。オキナワ、それを見て「はッ!」とマネしてコージに鼻で笑ってみせ、ためらうことなく座敷に腰掛ける。一方はにかんで部屋の端に立ったままのコージに、急いで座布団をはたいて階段に置き、どうぞ、と勧めるテレサ。おずおずとそちらへ向かうコージ。自分の分も用意されると思い立ち上がるオキナワだったが、テレサはコージのことしか見ておらず、あえなく同じ場所にまた腰を下ろす。「さっきは、アリガトウゴザイマシタ。」「ううん、オラは何も…」「お茶、飲みマスカ!」「あっ、おかまいなく…」お互いもじもじと照れ笑いしながら会話する二人。
 勢いよく楽屋のドアが開く。入ってきたのは目の周りに大きな痣を作り、衣装も破れボロボロな姿になったエドゥアルダ。「あンの、変態野球帽!!」怒りを込めて叫ぶ。「お疲レサマ~!」驚く様子もなく声を掛けるマリアン。しかしコージは目を丸くし、勢いよくエドゥアルダに駆け寄る。「大丈夫だべか!?」「ダレ!!??」思い切り不審がるエドゥアルダ。オキナワが間に入り、コージを引き離す。「オキナワ、あの人怪我してる!」「そうだな。」「救急車…救急車呼ぼう!」「呼べねえんだよ!」「なして!」「不法就労だからだよ。」「いいのいいの!よくあることダカラ!」マリアンが割って入る。「客もみんなわかってんダヨ、私たちが何も言えないッテ。わかっててやってんダヨ。」(エドゥアルダと手当てをするマリアンのやりとり 6/8マ「唾つけたからすぐ治ルヨ」エ「お姐さん唾ツケタノ!?痛いし汚イヨ!!」6/18エ「唾ツケタノ!?ばっかじゃネエノ!?」) 
 「わかんねぇべ…」もどかしそうにオキナワに詰め寄るコージ。踊り子たちは皆違法滞在者で、病院に行けばすぐに見つかり強制送還となってしまう。「ここにいちゃいけねえ人たちなんだよ。」オキナワの言葉に、表情が悲しく和らぐコージ。「…じゃあオラたちと一緒だな。」「一緒じゃねえよ、俺たちは合法!」「でも、どこにいても、いちゃいけないとこにいる気がしてるべ…」「…言ってる意味がわかんねえよ。」コージの言葉に苛立つオキナワ。「ワカリマス。」静かな空気の中、テレサの声が響く。「ワタシ、ワカリマス…」コージの傍へ歩み寄るテレサ。「ア…アノ、ふ~るさと、が、かえるかな、か~える~かな~」ぎこちなく、しかし伸びやかな歌声で『北国の春』を歌うテレサ。驚きながら喜ぶコージ。「その歌知ってたの?」「いえ、さっき初めて聞きマシタ。」「上手だよぉ!ちょっと違うけど。」にこにこと褒めるコージ、嬉しそうなテレサ。(6/18 コージの足をわざと爪先で踏んでみるテレサ。驚いて笑うコージ。)「違うトコロ?」「ふるさと、”が”じゃなくて、ふるさと”へ”だ。」「ふるさと、ってどういう意味?」テレサから問われ、「えっと…ふるさとは、…なんて訳したらええべ…。えへへ、わっかんねえなぁ~」と、頭を掻きながら笑って答えるコージ。今度は教えられた歌詞を、ちょっぴりコブシをつけてみたりしながら歌うテレサ。「ん、」と優しく相槌を打ちながら見守るコージ。歌い終えるとパチパチと胸の前で拍手を送る。
 和やかな空気が流れる中、「ヤメテ!その歌ヤメテ!!!」と叫ぶエドゥアルダ。驚きそちらを見遣るコージたち。楽屋のドアが開き、アイリーンが顔を出す。「ダイジョウブ~?」と尋ねると、再びドアを閉める。黙ってしまったエドゥアルダに歩み寄るテレサ。「すいません、ちょっとうるさかった、デスカ?」「ふるさとっていうのは、帰りたくても帰れない場所のこと。あんたでいうウクライナダネ。」何かを諦めるように、代わりに答えるマリアン。エドゥアルダは座り込み、膝に顔を埋め震えている。コージが「でも、この曲は…」と反論しようとすると、「帰って!もう外へ出ても大丈夫デショ。」マリアンに突き放される。返す言葉もないコージ。「テレサ、あんたまだまだ稼ぐんデショ?お父さんの借金、ホンダのカブ、弟の学費、まだまだ稼いで、家族助けるんデショ?それじゃあこんな男、仕事の邪魔になるだけダヨ!」テレサも何も言い返せず俯いている。「あんたも、中途半端に優しくしないでくれるかナァ!こっちはそういう心、とっくに捨てて戦ってンダヨ!」
 マリアンの言葉にショックを受け、立ち尽くすコージ。楽屋のセットが下がって行き、何もない暗い空間、オキナワとコージだけが立ち尽くしている。「…コージ、行くぞ。」「だども!」「わかってるよ。…帰れないからこそ、歌う歌だよな。」「ああ…」頼りなく肩を落とすコージに、声を荒げるオキナワ。「お前がしっかり歌えばきっと伝わったよ!…でも、お前は歌えなかっただろ。」悔しそうにそう言い残し、コージを置いて立ち去る。悔しさ、悲しさ、虚しさを浮かべた暗い顔で、ふらふらと歩きだすコージ。スナックのセットが登場し、店のソファに崩れ落ちるように座ると、テーブルにつっぷしてしまう。

 

【スナック】
 カウンターには二人の男性客がスナックのママと話している。テーブル席には突っ伏したままのコージ。そこへ、千鳥足のオキナワがトイレから戻ってくる。「そもそもそもそもだな!しょもしょも、オメーは何がしてぇんだ?ん?しょもしょも!」(志村けんのバ〇殿のような話し方のオキナワ。酷く酔っている。)「だからぁ!オラは歌手になるんだぁ。」こちらも酔っ払い、舌足らずなコージ。ヘラヘラと笑いながら、おかわりを注文する。「あんまり飲みすぎないでね?」心配(日によって迷惑そうに)するママに注いでもらった酒をさっそく喉に流し込み、オキナワとぐだぐだと話し始める。「なれねぇよ~このままじゃ!しょもしょも!なんで歌えねぇのに歌おうとするの!」二人ともふにゃふにゃになりながら笑い合う。
 そこへ、「こんちー!」ギターを担いだ大野が、中央の階段を降りて店に入ってくる。その後ろからもう一人客が来店。「大野さん入ってくとこ見えたから。」「おっ、嬉しいこと言ってくれるねぇ。」「大野さん、こいつに一曲歌ってやってくれよ!」「あいよ!」「いい!歌なんか聞きたかねえよ!」自分の会社がうまくいかず、大企業への恨み言を呟く客と、それを励まそうとする客。そんなやりとりの中、ギターを奏で始める大野。曲は水前寺清子『いっぽんどっこの唄』。歌が始まれば聞き入る客たち。コージもうっとりした(酒のせいもあって目がかなりとろんとしている)表情でその歌を聞く。歌が進むにつれ、再び感極まって今にも泣きだしそうに顔を歪める。歌が終わると、「…まただ!…なして、オラが歌ってほしい歌がわかったんだぁ…」そう言ってふらふらと立ち上がり、大野の元へ歩み寄る。「いや、お前じゃなくてあちらのお客さんのために歌ったんだぞ?」オキナワのツッコミも届かない。
 大野の目の前に立つと、感動を伝え、「すいません、弟子になります。」と、ふにゃふにゃした口調で告げて頭を下げる。突然のことに混乱する大野。「弟子にしてくださいは言われたことあるけど、弟子になりますって、聞いたことねえよ…」「よろしくお願いします。」ヘラヘラと頼み込むコージ。「弟子はとらねえよ。」断られ、「どうしてだべかししょ~!」と大野に詰め寄ろうとするコージを、「すいませんこいつ酔っぱらってるんです~」と止めるオキナワ。「あっ!横丁の人間だろ?連れて帰れよ。」(6/18 コージの腕を掴んで「へ~い」と手を上げさせるオキナワ。されるがままの酔っ払いコージ。)しかし、「跡継ぎだよ、跡継ぎ!」客もコージの側につき、冗談半分のように大野を説得する。「ダメだ!」「なんでだべししょ~」と大野に泣きつくコージ。「俺はお前の師匠じゃない!」「ししょーだ!」「師匠じゃないと言っているだろう!」「ししょーだ!」「師匠ではない!」「ししょーだししょーだししょーだ!」「ではないではないではない!」「ししょーだって言ってるべ!!!」ヒートアップの末、大野を思い切り殴ってしまうコージ。勢いよく倒れ、「何なのお前!!」とコージの熱量に怯えて叫ぶ大野。
 ハッとして謝りながら説明しようとするコージ。「あの!オラ、北津軽郡から…じゃなくて!えっと、ばっちゃんが!…ええと…だから…。なのにだめで!今…」うまく言葉が出てこず、頭を掻きむしるコージ。「ああ…あああ…ぁああーーー!!」突如叫ぶと、階段の裏へ走り去ってしまう。驚いて固まる大野や客たちに、へら、と笑って誤魔化して、コージを連れ戻しに行くオキナワ。だが直後、コージ自ら再び飛び出してくる。そして力を込めて歌い出す。「凍えそうなカモメ見つめ泣いていました、あァ~ァァ~…津軽海峡、冬ゥ景色ィィィィ…」(石川さゆり津軽海峡冬景色』)ポカン、とする周りの人たち。さらに「何があァってももういいのォ~~」(石川さゆり天城越え』)と歌い続けるコージをオキナワが止める。「お前が歌える時と歌えない時の違いを教えてくれよ!」怒鳴るように訴えるオキナワ。「そんなのオラにもわかんね!」泣きそうになりながら怒鳴り返すコージ。
 座り込んだまま黙っていた大野が言葉を発する。「…言いたいことがうまく言葉にできなくて、やっと喉から出てきてみたら、歌になっちゃったんだろ?」「…そうです。」涙声で答えるコージ。「お前、そんなんじゃ生きづらいだろう?」「…はい。」「ただ、それは俺も同じだ。」何か、想いを巡らせる様子の大野。再び口を開く。「…給料はねえぞ!」ハッとして、顔を上げるコージ。「…はい!」「あれこれ聞かれるのは嫌いだ。質問は最低限にしろ。」「はい!」「悪いが、俺の言うことは絶対だ。」「「はい!!」」しれっと隣に立ち、一緒に返事をするオキナワ。驚いたように隣のオキナワを見るコージ。「お前も?」「俺たち、コンビでやらせてもらってますから!ししょ~~」急に態度を変えて、ゴマすり声を出すオキナワ。「…ついてこい。俺のショバ、案内するわ。」ニヒルに笑い、出口へ続く階段を上る大野。顔を見合わせて喜び、勢いよく抱き合うコージとオキナワ。コージが改めて「ししょ~!」と呼ぶと、振り返り、手で”ついてこい”と伝える大野。わぁっ、とまた顔を見合わせ、続いて階段を駆け上っていくコージ。「悪いけどつけといて!」と言うオキナワに、「今日はおごるわ!」と客も共に喜んでくれている。「ありがとよ!」二人の後を追うオキナワ。