南条幸男の泣き顔があまりに美しくて言葉を失う回だった、モンテクリスト伯。
彼の名前が「幸男」だなんて。そこに込められたのは皮肉なのか、それとも本当は幸せになってほしかったという思いなのか。…後者だったらいいのにな、なんて思いを巡らせながら観ていました。
どうしても飲み込めなかったのは、真海が海辺で遠くを見つめながら口にする言葉。
「昔はみんな幸せだったのに」。
暖が幸せであることが、幸男にとっては”すみれ”という自分にとっての幸せを奪われることそのままだった。
それであっても幸男は、笑顔でサプライズプロポーズに協力して、ふてくされながらも結婚式に参列していた。自分が警察にする電話がどんな未来を連れてくるか、そこまで深くは考えていなかったんじゃないかと思うし、すみれのことも本気で奪おうと心の底から思っていたわけではないんじゃないかと、幸男を見ていると思ってしまう。
昔の暖は、きっと誰よりも幸せだった。周りの人も自分に笑顔を向けてくれるのだから、みんなも幸せなのだろうと無条件に信じていた。
幸せの最中にある人間は、自分の幸せの陰に誰かの不幸があることなんて考えもしない。それに気づかない人こそ真に幸せであるんじゃないかとも思う。(だってその人の見ている世界に不幸は存在しないんだから。)
暖は、真に、幸せだった。暖に見えている現実と、暖の周りの人々が見ている現実は、同じものではなかった。
「ひとつ歯車が狂っただけですべてが変わってしまった」
そう呟く真海は、未だ、暖であった自分と周りが見ていた景色の齟齬には気が付いていないんじゃないかと思う。
彼の中では、あの頃の、昔の”みんな”は今でも幸せな顔をしているんだろう。
じゃあ、彼の考える「狂った歯車」は一体どれを指すのか。
幸男が警察に偽の情報を通報したこと。
船長がスパイだったこと。
幸男がすみれを好きになったこと。
暖が、すみれと、結婚したこと。
その歯車を、狂わせたのは、何だったのか。
狂わせたのは、誰だったのか。
そんなことを考えていると、人間は自分の見ている景色しか見られないんだな、ということも強く感じた回でした。
…なんて、幸男にかなり同情過多な見方ですけれど!いや、そりゃ好きな人を奪った代償が冤罪とあれだけの拷問だなんてあまりに大きすぎるね!それだけじゃないけど!それにしてもだよね!
ただ、そうなるとやっぱり、まだ幸男は生きてるんじゃないかとも思えてきますよね!!!
友を裏切り、罪を犯し、幸せを掴むも復讐により全てを失った男が、もし生きていたら。新たな復讐の炎がともるのか、それとも懺悔と赦しへ進むのか。うわあ、そうなったらますます面白いなあ……観たいなあ…命を繋いだ南条幸男が観たいなあ…!
しかし放送開始前は、自分からは観ないタイプのドラマだな、と思っていたけど随分ハマっている!また新しい世界を見せてもらった。大倉くんありがとう、そしてこのドラマを、南条幸男の姿を、最後まで見届けます。